もう一度、横溝正史「悪霊島」はガチムチ男まつり

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先日のブログで、1981年の映画「悪霊島」を、評論家でもないのに、偉そうにクソミソにけなしたので、ちょっとだけ反省し、DVDをエライ高い値段で購入して、さらに原作まで購入して、秋の夜長にじっくりと読書&DVD鑑賞をしました。


こういう自腹と労力を惜しむようでは、偉そうなことを言う資格がないと思ったのです。


さて、久々に観た映画に関しては意見を変える気はないのですが、原作は実は何度も読んでいるので、今回はあることに注目しながら読んでみました。


この話の被害者は、女性を除いて、全員が似たような身体的特徴を持つ男性で、作者は最後にはそれを犯人の「好みのタイプ」と表現しました。


その身体的特徴とは、ガチムチの逞しい中年男です。


以前このブログで「強い男への抗(あらが)いがたい憧憬」について書きましたが、これは支配的男性のことを書いたつもりでしたが、「悪霊島」では、もっと端的に、逞しく男性的な肉体への憧憬です。


最近、俺は椎間板を痛めてから、リハビリのためにかなり頻繁にジムに行くようになり、つい人の体格を観察するようになりましたが、日本人の体格は以前に比べると、かなりよくなっているように感じます。


若い時は、今から考えられないほどがりがりに痩せてましたが、今は恥ずかしいのですが、もし俺が悪霊島に行ったら、犯人の餌食になって殺されてしまいそうです。多分、今の俺は犯人の「好みのタイプ」だからです。


周りの人からも体格のことを言われるので、ガチムチだという自覚があります。とはいえ、俺のような体型の人は周りをみると、結構いるので、俺はそれほどでもなく、ましてや憧れの対象になるほどのものではありません。


さて、悪霊島の被害者/事件当事者男性の肉体を、作者がどのように描写しているかを、読みながら書き出してみました。


原文のままです。


青木修三 43歳

「・・・パンツひとつで砂の上に両手をつき、太い両脚を前に投げ出している写真である。なるほど、厚い胸板、広い肩幅、がっちりとしたたくましい体つきである。肉感的というより、いささか淫蕩的(いんとうてき)にさえみえる中年男である」


越智竜平 44歳

「なかなかどうして、がっちりとして逞しいその体は、男盛りの精力を連想させて眩しいくらいである。肩幅も広く、胸板も厚い。胴回りも太く、それに身躾み(みだしなみ)のよい男でいつあってもヒゲをきれいに剃っているが、その剃りあとの青々としているのも男性的である。」


越智吉太郎 43歳

「まったく良い体をしている。中略。その体はどこもかしこもゴツゴツと筋くれ立ってたくましく、脂ぎった膚はギタギタとして動物的な生臭さを思わせる。」


荒木清吉 薬売り父 36歳で失踪

「日焼けして色はまっくろだったそうなが、がっちりとした体格で、どこか如才ないところがある。」

「たくましい肩にめり込むようなその顔は、いかにも三十五、六という年齢を思わせて精力的である。」

「裸の上に回しをつけて、蹲踞(そんきょ)のかまえをしているところを、正面から撮った写真である。なるほどこうして裸でいるところをみると、よい体をしている。広い肩幅、厚い胸板、太い胴回り。体全体にボリュウムが充実していて、はち切れんばかりの精力が、静なる構えのなかにも躍動している。」


荒木定吉 失踪した清吉の息子 22歳 

「行商人などに似合わない逞しい体つきをしているが、首から上と下ではまるで膚の色がちがっているのは、絶えず行商をして歩くので陽に焼けているのだろうか。それにしても指が太くゴツゴツしているのは行商人とは思えない。まるで肉体労働者のようにみえる。」


妹尾松若 神楽太夫 33歳で失踪

「神楽そのものがそうとう激しい労働であるうえに、(祭りの)かけもちがひどいから、体の弱いものには務まらない。だからみんな頑健で、たくましい体をしている。」


妹尾勇 失踪した松若の息子 23歳

「おまえは父ちゃんに似て逞しゅうええ体に生まれて育った」


山城太市 淡路人形遣い 36歳で失踪

「身長は一六八センチ、体重は七五キロあり、ちょっとお相撲さんを思わせる体格だったという」

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以上。

犯人がなぜそのような男を殺したかというと、これは非常にロマンチックで、自分が本当に愛した初めての男が、そのような逞しい男性だったためです。


しかも、その愛は無残にも引き裂かれて、最悪の結果をもたらし、その時に壊れた心は、生涯戻ることがなかったためです。


映画版ではそこをもっと悲劇的に描き、また犯人も変えています。創作を加えることはいいと思うのですが、原作以上に救いが無く、猟奇的になり、カタルシスがなくなってしまいました。


それにしても原作では、全編にわたって何かと男性の肉体や性を感じる描写が多く、横溝大先生は、78才位に執筆なさったわけですが、さすがに老齢と思わせる、かなりのしつこさです。


最近は30歳以降の太い男がモテるようですから、女性の好みも色々と変わりますが、これは全体の年齢が上がってきているのと、日本人の体格がよくなったせいでしょう。


このような男性がお好みの女性の方、または男性諸君には、上記の逞しい男たちに何が起こったかを想像しながら読めば、また違った読み方で、非常に楽しんで読めると思いますよ!


ガチムチ万歳!


最後に、原作「悪霊島」では、金田一耕助は、ある殺人をその犯人の前で許します。

探偵金田一耕助は、犯人に対して同情的だったことはありますが、これまで決して罪を許しませんでした。それが、強い信念を変えたところをみると、もう探偵業から足を洗うつもりだったのかもしれません。


「悪霊島」が横溝正史の遺作で、実質金田一耕助の最後の事件なわけですから、、これで本当に完結したのだなあと、読後、しみじみと寂しくなってしまいました。


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コメント

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    たまたま来たのでお邪魔します♪今色んな方のブログ読んで勉強してます♪更新されたらまた遊びに来てますね♪

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    他の方のブログからやってきました♪今ブログゆっくり読んでみました~(●´ω`●)ゞエヘヘ♪読者なりますね♪またきます♪ヽ(*´∀`)ノ

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    こんにちは!ブロブ楽しく読ませて頂きました。書き方・内容とても勉強になりましたぁ。更新ってなかなか難しいですよね汗。また更新されたらお邪魔しますね!

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    久しぶりにアメブロを見ていたらこのブログに行き着きました。いい記事を書かれますね。読んでいて引き込まれました。お邪魔さまでした✴主婦の気まぐれなブログもご覧いただけると幸いです。

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    お邪魔します?彡楽しそうなブログ巡回していたらここまでたどり着きました。意外な発見とかあって参考になります!更新って大変ですよね汗。でも頑張りましょう☆ぺたの代わりでした~失礼しました!!

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