映画「ナッシュビル」 デスパレートな女たち、1/fゆらぎ


ナッシュビルという映画をご存知でしょうか?

1975年のロバートアルトマンの作品です。

 

日本公開は1976年4月です。

 

ロバート・アルトマン監督の映画は、「マッシュ M☆A☆S☆H」が、映画、テレビシリーズ共に大好きでした。

 

「Suicide is painless」自殺は苦痛がない

 

これは、マッシュの主題歌のタイトルですが、また、すごい歌ですよね。

 

俺は曲がりなりにもカウンセラーなので、いい曲だなんて書いたらいけないかもしれませんが、突き詰めると、人間には死ぬ権利だってある気がします。

 

・・・とはいえ、マッシュの内容は、食欲、性欲、所属欲・・・と、とても分かりやすい生きる力に満ちた人間ドラマです。いい映画です。

 

さて、ナッシュビルですが、この映画は、間違いなくロバート・アルトマンの最高傑作ですが、日本では酷くこけて、俺の周りでこの映画を観た人に会ったことがありません。

 

伝説の映画と言われていましたが、DVDは2012年にやっとリリースされたので、是非探してご覧ください!

 

しかし、このチラシのキャッチは酷いなあ・・・。どうして、こう、ものの本質が分からない野郎が、キャッチなんか書くんだろう???

このナッシュビルの何がいいって、本当にいい映画です。全く、難しくも悲しくもないです。青春でもありません!あー、ちょっと悲しいかな・・・。でも、ちょっとだけね。それが、またいい!

1990年、映画誕生100年の年に、フランスの批評家が選んだ映画史上ベスト映画の、ベスト10に入っていました。ヨーロッパでは受けたんですね!俺ってヨーロピアン?(笑)

ストーリーは、総勢24名の群像劇ですが、誰が誰か分からなくなるなんてことは一切ない、みんなユニークな人たち。ところが、それぞれが、どこにでもいる普通の人です。

 

それぞれの人生の役割を、懸命に生きている人たちです。

 

この懸命にというのは、英語で言うとデスパレートです。

 

デスパレートとは、一生懸命さが、方向性や分量を少し間違っていて、「痛い」感じです。

 

決して、女性にデスパレートと言ってはいけませんよ!「男にあせっている」という意味ですからね。

 

でも、特に、女性陣は全員いい!みんな、デスパレートな感じです。

ナッシュビルは、カントリーミュージックの聖地だそうですが、そこで行われる大統領予備選挙候補の応援コンサートのために、ナッシュビルに集まってきた音楽関係者の5日間の話です。

全編にカントリーミュージックが溢れており、確か、アカデミー主題歌賞をとったのだと思います。

俺がこれを観たのは、17歳のとき。公開から2年待って、やっと博多に来たので、学校をふけて観に行ったのでした。学ランのまま、小倉から鈍行電車で。

決してカントリーが好きなわけではないですが、劇中の「DUES(冷たいあなた)」という歌に、しびれてしまった!

この歌にしびれたのは俺だけではありません。劇中のキーパーソンもしびれました。彼のしびれ具合は、その後、映画のラストで大変なことになってしまいますが。

でも、俺には何故だかわかります。多分、彼と同じ顔をして、スクリーンを観ていたと思います。

歌っているのは、ロニー・ブレイクリーという女優ですが、この映画以外で見たことがありません。

この人の歌声は、1/f ゆらぎというビブラートの持ち主で、正しい音から微量に上下に揺らぐのですが、天然のものです。

この1/f ゆらぎを持っている歌手は、滅多にいないんですよ。ウタダヒカルとかエルビスプレスリーとかで、皆さん天才です。

彼女は、劇中ではスターの役です。神経が憔悴していて、ナッシュビルに入ってすぐに、過労で入院してしまいます。

そして、このDUESという曲を歌ったあと、とうとう、神経が参ってしまいます。舞台上で、あらぬことを口走り、頭がおかしくなってしまいます。

つまり、この歌を歌う時、精神がおかしくなる一歩手前にあったということです。

そう思って観なくても、彼女の歌声には、言葉にできない深い悲しみがありました。冷めていく男を嘆く歌詞。それと、1/fのゆらぎ。

正しさと、何かが間違っている音律の不確定なゆらぎ・・・。

これが演技なら、アルトマンは素晴らしいです。理性を1/fゆらぐ女は、かなしく美しいです。もしかしたら、演技ではないのかもしれません。

♪It hurts so bad

It gets me down, down, down♪

その後、40年近く経った今でも、この曲が、俺の心から決して消えることがないのは、多分、俺の姉貴を思い出すからです。でも、この話は、またいつか。

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コメント

  1. SECRET: 0
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    SozoさんがMASH好きとは驚きでした~(@@)

    ナッシュビルは見てませんが、MASHは大大大好きな映画の一つで、わざわざビデオ&DVDを購入したほどです。

    アルトマン監督はMASHで、大勢の人が一度に話すというシーンを始めて映画でやってみたそうで、そのシーンが私もやたら好きです。

    今度ナッシュビル見てみます!

    • Sozo
    • 2014年 10月 16日 12:21pm

    SECRET: 0
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    >JUICYPOPさん
    ここでは書いてませんが、アルトマンには「3人の女」という、これまた素晴らしく、また、誰も知らない幻の映画があります。わざわざ買うほどマッシュがお好きならば、きっと、この2本も、生涯のお宝になるかもですよ!

    • 2014年 10月 17日 9:36am

    SECRET: 0
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    ゾウちゃん、M*A*S*Hはおいらも好きで見てたよ。映画は見たことないけどTVシリーズは再放送で毎日やっていたのでTVで毎日見とった。オープニングのもの悲しい音楽もまだ覚えとる。sitcomに分類されると思うのでおちゃらけているエピソードの方が多かったように思うけど悲しい事のほうがよく覚えているよ。

    • Sozo
    • 2014年 10月 17日 11:55am

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    >っさん
    Hunnicutt大尉?
    俺も再放送組だけど、よく昼間やってたなあ。田舎だったかんね。調べたら、なんと11シーズンまであったそうすよ。最終回の視聴率はなんと77%で、未だ、記録が破られていないとか。77%はすげえかも。そこまで行くこと、もうないかも・・・。

    • 2014年 10月 17日 1:35pm

    SECRET: 0
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    ぞうちゃん。最終回は心が痛いです。実際に最終回を見たかどうかは覚えてえへん(断片的には見たことはあるけど)。でもエピソードの詳しい記録は読んだわ。今でも最終回のエピソードをなぞると鳥肌が立ってくる。それだけ個々のキャラクターが自分の中で成長したということなんやな。おいらはM*A*S*Hは昔アメリカに住んでいたときに見てたんや。再放送で毎日2エピソード連続でやっていたと思う。もう10年以上(ひょっとしたら20年くらい)前だよ。

  2. SECRET: 0
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    読者登録させてもらってもいいですかー??私のBLOGでは、ネット上の面白ニュースなどをまとめて記事を書いてます_〆(・ω・` )カキカキぜひぜひ遊びに来て下さい☆待ってますね!!

    • Sozo
    • 2014年 10月 21日 9:46am

    SECRET: 0
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    >BuzzSokuさん
    ありがとうございます。拝見しますね。

    • Sozo
    • 2014年 10月 21日 9:55am

    SECRET: 0
    PASS:
    >っさん
    人に歴史あり・・・いいなあ!いつか、話を聴かせてください。

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