長い間、眠りは早い時間に訪れた。
これは、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」の冒頭です。
前回、ブログで最初の記憶 (リンクです。ご興味のある方はどうぞ!)を書いた後、これを思い出しました。
川端康成の雪国の冒頭のように、この冒頭は、文学史上もっとも美しい冒頭とされているのですが、実は、いま、初めてそう思いました。
この後、
部屋の蝋燭を消すとすぐに、まぶたは重くなり、こう、自分に言い聞かせるまでもなかった。俺は眠るのだ、と。
と、続きます。
Longtemps, je me suis couché de bonne heure. Parfois, à peine ma bougie éteinte, mes yeux se fermaient si vite que je n’avais pas le temps de me dire : « Je m’endors. »
やはり美しいので、原文を載せました。
何度も読まされたので、頭に入っています。美しいだろどうだ!と押し付けられて、さっぱりわからなかったのが、いまは泣きそうに美しいと思うのは、なぜでしょう。
眠りに落ちるというのはよく言ったもので、本当に落ちるようですよね。
不思議な浮遊感があるものです。
眠りに落ちる前の浮遊感と書いて、雪国の冒頭にも、そのような浮遊感があることに気づきました。
国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった。夜の底が白くなった。
どこに落ちるかというと、その瞬間に、人は、人生最初の記憶と忘却の境界に落ちているような気がします。
書くほどに、眠くなってきました。こころの底で何かが手招きをしているようです。
「失われた時を求めて」では、失われていた記憶が、ある時、マドレーヌを一口食べたとたんに、まざまざと蘇ります。
その記憶とは、母に連れられて日曜の朝、教会に礼拝に行った帰り、お茶とともに出されたマドレーヌでした。
これもいまいちピンとこなかったのですが、考えたら、このように、五感が記憶の引き金になることは、日常生活でもよくあります。
つい最近、近所のうらぶれた商店街を歩いている時に、商店街のBGMで、ものすごく懐かしい歌謡曲が流れていました。
どちらかというと、嫌いな曲だったのです。だから、当時、レコードを買うこともなく、敢えて聴かず、なぜ、行くところ行くところで、この曲が流れているのだろう・・・と思っているうちに、またまた誰かがカバーして、そしてすたれた曲。
うらぶれた商店街に、立ち止まってしまった。忘却の彼方から押し寄せる、無意味な思い出の断片。
これで思い出したのは、カレーライスです。
1980年ころ、青山のキラー通りにヱスビー食品がやってる、終夜営業のダイナーがありました。名前が思い出せない!名前の一部に「O」があった気がする・・・。
あんなに行ってたのに、やだなあ。
そこから徒歩すぐに住んでいたので、夜中に腹が減るとカレーを食べに行ってました。ヱスビーだけに、カレーが美味かったんですよ。
ヱスビーは六本木にもレストランを出していました。東風という中華です。ここは、伝説になっているので、きっとご存知ですね。
その後、そこからすぐの喫茶店で、パックマンを延々やるのです。
いつ寝てたんだろう?てか、石川セリはどこで登場するの???その辺のどっかに、ご本人がいた気がする。
プルーストのマドレーヌとはえらい違いがありますが、石川セリを聴いて、カレーライスを思い出したんだから仕方ない。これが記憶の引き金です。
しかし、書こうと思ったところに全然行きつかない!散文もいいところですね。俺は眠いんだよ。
4月のある日、俺は高尾に出かけました。高尾山ではなく、JR高尾の方です。
ここに、山桜のめちゃくちゃきれいなところがあるのです。
桜を堪能した後、JR高尾のお土産屋で「石見銀山こおか茶」というお茶を買いました。
なぜ高尾で石見銀山なのか・・・。なにも疑問を持たずに、ああ、そこは銀山だったのか・・・と買って帰る自分がほんとうに怖い
です。
説明書きを見ると、こおか茶とは、カワラケツメイだと書いています。
河原決明。漢字で書くとこんなにかっけー。なんか、強そうな男の名前みたいですね。ヽ(゚◇゚ )ノ
河原決明には子供がいます。決明子。そうケツメイシとは、河原決明の子どもだったのですね!!!!
この発見に、すごく嬉しくなって、ケツメイシ好きの友達にLineで報告したんですが、完全にスルーされました・・・。意味が不明だったのか、それとも、知らなかったのは俺だけなのか。
一般常識のない俺には分からないのです。
あー、こんな話ではなかったのです。
ここで、河原決明を一服。
記憶の引き金の話しでした。そもそも、このお茶が記憶の引き金だったことを書きたかったのです。しかも、驚きの効能が。
でも、長くなったので、河原決明の話は、また今度。
Je m’endors 俺は寝る。
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フランス語っていうのは、排他的な美しさがある言語だと思うので、ものすごく憧れるんですけど、
もちろん、習得しようとする気もなく、
永遠の憧れです。
ともあれ、海外文学は原文で読間ない限り(←だから読めない)
ほとんど信じられないので読まないんですが、
プルースト、ちょっと久々に読んでみようかと思いました。
大昔、4-5ページ読んで、誰かに貸したか上げたかしてなくなりました。
まずは失われたプルーストを買い戻して、読んでみようかと思います。
読了するのがいつになるのか分かりませんがw
プルーストの引き金に感謝
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>イシマールさん
コメント、ありがとうございます!確かに、長いのと、原文も1つの文章が、異様に長いので(確か、文学において、世界1長い文章だったような・・・)、翻訳も、とても読み辛いですよね。映画監督ヴィスコンティが、失われた時を求めてを映画化しようとして、シナリオを書いていますが、それが日本語で出版されていました。もう絶版かも知れませんが、単行本で出ていたので、探せばあるかと思います。それでお読みになると、感動しますよ!